エヌ氏の遊園地

星新一大好きです|д゚)

はいよる

彼らは這いよる 元々生存に向いているような場所ではないのだろうけど 彼らは懸命に生きることのできる場所を探す 彼らは這いよる そうすることで彼らの祖先も生き延びてきたのだ 彼らはシンプルであり粘り強い その在り方は我々人間も見習うべきかもしれぬ

かさなりは

連理比翼のように 寒さから互いに守りあうように 重なっている その甲斐あってか彼らだけはいまだに枯れずにいている その様子は誠に美しく 紅葉を見に行ったはずの僕の心を強くつかみ取った あぁ、僕もあの葉のように在り方を重ねることが出来る人と 出会う…

あいかたばし

彼らは二対で在る 彼ら本来ならば、それぞれが独立しており ひとかどの奴、なんて言われてもおかしくないが 近くにあるからこそ、対でなければならぬ それを悲しいことだと、不幸だと思うだろうか? 否、彼らは対で存在するからこそ、片方だけでは得ることが…

よるがおりて・・・

夜が降りてくる 這いよるように迫っており 気が付くとそれはすぐそこまで迫ってきているのだ だが、それは妖しく美しい 思わずほぉと見惚れてしまい 日々の忙しさもどこかに落としてきてしまい のんびりと惚けてしまうのだ そして惚けた僕を夜はあっという間…

だるまさん

だるまさんがみてる めっちゃみてる みっちりとつまっている 彼らは祈られて、体に文字を刻まれ その願いが届けば片目を入れられる そして此処に捨てられたのだ だるまさんがみてる じぃとみてる 無表情に じぃとみてる

あかとびら

長い長い路地を進んでいくと 目の前には我の強いあかいとびらがあった それは暗い路地から見つめているとかくも魅惑的であり そちらのほうにふらりふらりと歩いて行ってしまう 光によって行く虫のように カレーの香りにつられる部活帰りの少年たちのように …

せんろ

仕事に、人生に疲れた僕は線路をじぃと見る なに、人生をやめようというのではない ただ見惚れているだけだ 彼らはまっすぐである 彼らは愚直である 毎日、決まった時間に走る列車を支える縁の下の力持ち いぶし銀な男前である 線路を見ていると 僕の人生も…

ひとりきのこ

かれはぽつんと生えていた 周りに仲間もおらず、いても小さなものだけ 彼と同じ背丈のものはおらず 人間で例えるならば、ぼっちというやつであろう だがそんなことをものともせず彼は飄々と伸びていっている 彼は孤独なれど、一面の緑の中で唯一のきのこであ…

かんらん

観覧車がキィキィと音を立てたような気がした 遠目から見ていると、少し一瞥しただけだと まるで動いていないかのように錯覚するそれは じぃっと眺めていると ゆっくりとではあるが確実に動いている その動きは、まるで僕の在り方を肯定してくれているかのよ…

ものびる

ビルが聳え立っている その鋭角で真っすぐなさまは すぐに横道にそれがちな僕を糾弾するかのようであり 恐ろしくもありながらも目をそらすことができぬ 急な寒に見舞われた木々はすでに冬の装いとなっており 寒さは一層加速していく 冬はすぐそこまで来てい…

あじさい

時季外れの紫陽花 ただひとつ、暗闇にぼんやりと佇んでいる 端々は枯れつつあり、寒さゆえにあと数日の命であろう それでも、今の時期に見れることはまるで奇跡のようであり 数週間前の暖かった気候を思い出し 今は過ぎてしまった夏を懐かしませるのだ

てっこつ

其の鉄の骨は僕を覆うかのようにぐぅんと伸びている さながら孫悟空を捕まえたお釈迦様の指のようである 上から下までよどみなく真っすぐと伸びている そのダイナミズムに圧倒されながらも 強烈なまでの規則性の美学に 僕はくらくらとめまいを覚える

そなえる

名があるかどうかもわからない祠に これまたつつましやかに花が供えてある だが互いに出過ぎず、引っ込み過ぎずにいる様子は 熟年夫婦を思わせるようだ これでいいのだろう 片方が出過ぎないからこそ調和する いい塩梅 適当 よく使われる言葉なのだけれど、…

ゆうぐれ

日は落ちて、世界を鮮やかに染めていく それは春や夏では見ることのできない強烈な色であり 寒さを我慢してでも見る価値のある宝石のようなものである 僕は爽やかだった夏が去るのを悲しく思いながらも どこか秋の訪れを好ましく思っているのである もちろん…

あんどん

あんどん、ランプ・・・言い方は色々あれど それは行き先を照らす杖であり、目的地を示す光の玉でもある だがそれも夜の話 昼はひっそりとその存在を隠す まるで己はなきものであるかのように黙して語らぬ それでもその存在感はいつも僕の目の端に留まり 心…

おいなりさん

神社でよく見る二対の狐 稲荷社を守るその様子は様々である こちらの社の狐はすらりとスマートでクロヒョウを思わせるようなたたずまい 台風だろうと、寒かろうとその精悍なあり方は 知らず知らずのうちに僕の背筋をピンとさせる 悲しいかな僕は人間の癖に背…

さんどう

仲見世の参道は真っすぐに続く この道は人の目を楽しませ、お金を落としていく道でもあるけれど、 自身の心の整理をつけるための道でもあるはずだ 故に真っすぐであり 長く そして見通しがよいのだ 本殿が見えてくるにつれて 何を祈り、自身に誓うのかを考え…

白と黒

暗い道の向こうに白い壁に扉が見える。 それはさながら、今の自身の境遇を表しているようである。 明かりがまぶしく、直視するのもはばかれるようでありながら、目をそらすことが出来ない。 あぁ、この暗き道から飛び出て光の壁に羽虫のように真っすぐに向か…

ひとりとり

彼は孤独に佇んでいる 光の海の中で 光の空の中で 背をピンと伸ばし、空をキッと睨んでいる その鋭さ その雄々しさ その美しさ ただの鳥だというのに、僕には眩い宝石のように思えた そんな宝石を撮影する僕の姿は浅ましく 少しでも近くに行こうと首を伸ばし…

ちくたく

ちくたくちくたく 時計は時間を刻む 時計ごとに遅い早いの差はあれど、懸命に時を刻む 腕時計にしては珍しく秒針の音がする それはリズムの均等さは僕の心の平穏に大きく寄与し 徐々に、意識をさせないように、僕を穏やかな夢の世界へと導いていく 数十分後…

鳥居山

一つ一つの大きさは小さいものなれど、 その数は計り知れず、山の如し。 大きな鳥居とはまた別のスケールの大きさに、僕は目を奪われる。 小さいのと大きいのとどちらがいいのだろうか? 神域を示すことが目的の鳥居にいいも悪いもないのかもしれない。 ただ…

作動音

ウオォォォン・・・ウオォォォン・・・ウオォォォン・・・ 其の機械は一定の間隔をあけて唸る。 低く、静かに、確実に、さながら人間の呼吸音のように。 SFに出てきそうな近未来的なフォルムからは想像できないような優しい音。 赤ん坊が母親の心音を聞いて落ち着くように、 僕も其の…

あかつぶ

寒くなった。 夏は終わりを告げた。 気温の低下もそうだが、周りにある木や草花を眺めてみても、その差は感じられる。 名を知らぬ赤い実が咲いていた。 小さいころからよく見てはいたが名前は知らない。 もちろん種類なんてのもわからないし、言われも知らな…

あきがおちる

あきが落ちた。 ぽとっと落ちた。 たかいたかい木から、急に落ちた。 それは地面と対面した時点で、すでに元の形を失っていた。 あきが少し潰れた。 秋が来た。 秋が来たけれど、終わりもまた来つつある。 冬が少し顔を見せている。 結局のところ、流れゆく…

ひたりで

雨がしとしと降り続ける。 本来なら憂鬱な雨だけれど、二人なら楽しむことが出来る。 二人で一つの傘なんて、狭いはずなのに楽しむことが出来る。 会話がなくとも、決してつらさを感じない関係性。 そんな二人を眺めつつ、己が傘の広さを嘆く。 この広い傘の…

苔と

諸行無常、祇園精舎の鐘の音などという言葉もあるが、形あるもの必ず終わりがある。 特に緑に浸食されて終わりを迎えるということは日本に於いては、決して珍しいことではないのだ。 そして浸食されているからと言ってそれは悲しむべきことではない。 緑と人…

あやつり

人形劇が行われる。 コミカルな音楽に合わせて、人形がおどる。 おどる おどる おどる その場において、動くものはもはや人形しかいない。 それをただただ眺める人間。 微動だにしない人間。 どちらが本当の人形なのだ? 僕か?君か? 空恐ろしい気分になり…

うみぼう

まるで待ちくたびれた子供が地面に均等に木の枝を指していくが如く 巨人がポツポツと埋め込んだように均等に並んでいる。 まるでそこには町があり、人がいたのだけれと海の底に沈んでしまったかのような寂寥感が漂う。 そんな寂しさを伴う非現実的空間におい…

きのした

男はひとりでぼんやりと物思いにふけっている。 がやがやとうるさいはずの公園がそこだけは何かが止まっているように感じる。 水の壁を隔てたかのように音が、感性が鈍くなるのを感じる。 日々の喧騒はこの場になく、どろんとした心地よさが場を支配する。 …