エヌ氏の遊園地

星新一大好きです|д゚)

植物 緑

はいよる

彼らは這いよる 元々生存に向いているような場所ではないのだろうけど 彼らは懸命に生きることのできる場所を探す 彼らは這いよる そうすることで彼らの祖先も生き延びてきたのだ 彼らはシンプルであり粘り強い その在り方は我々人間も見習うべきかもしれぬ

かさなりは

連理比翼のように 寒さから互いに守りあうように 重なっている その甲斐あってか彼らだけはいまだに枯れずにいている その様子は誠に美しく 紅葉を見に行ったはずの僕の心を強くつかみ取った あぁ、僕もあの葉のように在り方を重ねることが出来る人と 出会う…

ひとりきのこ

かれはぽつんと生えていた 周りに仲間もおらず、いても小さなものだけ 彼と同じ背丈のものはおらず 人間で例えるならば、ぼっちというやつであろう だがそんなことをものともせず彼は飄々と伸びていっている 彼は孤独なれど、一面の緑の中で唯一のきのこであ…

あじさい

時季外れの紫陽花 ただひとつ、暗闇にぼんやりと佇んでいる 端々は枯れつつあり、寒さゆえにあと数日の命であろう それでも、今の時期に見れることはまるで奇跡のようであり 数週間前の暖かった気候を思い出し 今は過ぎてしまった夏を懐かしませるのだ

そなえる

名があるかどうかもわからない祠に これまたつつましやかに花が供えてある だが互いに出過ぎず、引っ込み過ぎずにいる様子は 熟年夫婦を思わせるようだ これでいいのだろう 片方が出過ぎないからこそ調和する いい塩梅 適当 よく使われる言葉なのだけれど、…

あかつぶ

寒くなった。 夏は終わりを告げた。 気温の低下もそうだが、周りにある木や草花を眺めてみても、その差は感じられる。 名を知らぬ赤い実が咲いていた。 小さいころからよく見てはいたが名前は知らない。 もちろん種類なんてのもわからないし、言われも知らな…

あきがおちる

あきが落ちた。 ぽとっと落ちた。 たかいたかい木から、急に落ちた。 それは地面と対面した時点で、すでに元の形を失っていた。 あきが少し潰れた。 秋が来た。 秋が来たけれど、終わりもまた来つつある。 冬が少し顔を見せている。 結局のところ、流れゆく…

苔と

諸行無常、祇園精舎の鐘の音などという言葉もあるが、形あるもの必ず終わりがある。 特に緑に浸食されて終わりを迎えるということは日本に於いては、決して珍しいことではないのだ。 そして浸食されているからと言ってそれは悲しむべきことではない。 緑と人…