きのした
男はひとりでぼんやりと物思いにふけっている。
がやがやとうるさいはずの公園がそこだけは何かが止まっているように感じる。
水の壁を隔てたかのように音が、感性が鈍くなるのを感じる。
日々の喧騒はこの場になく、どろんとした心地よさが場を支配する。
僕はひたすらにシャッターを切る。
パシャァ・・・パシャァ・・・シャッターの音だけが僕の世界に鳴り響く。
まこと心地よい。
だが、男が立ち上がった時、その静止した世界は終わってしまった。
日々の喧騒は息を吹き返し、容赦なく僕に襲い掛かるのだ。
ぼんやりとした、それでいて息遣いの聞こえるような不安が僕の背中にピタリと張り付く。
公園はいつもの公園でしかない。
言葉にしようのない焦りが僕をその場から追いやった。