エヌ氏の遊園地

星新一大好きです|д゚)

モノクロ

あいかたばし

彼らは二対で在る 彼ら本来ならば、それぞれが独立しており ひとかどの奴、なんて言われてもおかしくないが 近くにあるからこそ、対でなければならぬ それを悲しいことだと、不幸だと思うだろうか? 否、彼らは対で存在するからこそ、片方だけでは得ることが…

せんろ

仕事に、人生に疲れた僕は線路をじぃと見る なに、人生をやめようというのではない ただ見惚れているだけだ 彼らはまっすぐである 彼らは愚直である 毎日、決まった時間に走る列車を支える縁の下の力持ち いぶし銀な男前である 線路を見ていると 僕の人生も…

ものびる

ビルが聳え立っている その鋭角で真っすぐなさまは すぐに横道にそれがちな僕を糾弾するかのようであり 恐ろしくもありながらも目をそらすことができぬ 急な寒に見舞われた木々はすでに冬の装いとなっており 寒さは一層加速していく 冬はすぐそこまで来てい…

てっこつ

其の鉄の骨は僕を覆うかのようにぐぅんと伸びている さながら孫悟空を捕まえたお釈迦様の指のようである 上から下までよどみなく真っすぐと伸びている そのダイナミズムに圧倒されながらも 強烈なまでの規則性の美学に 僕はくらくらとめまいを覚える

あんどん

あんどん、ランプ・・・言い方は色々あれど それは行き先を照らす杖であり、目的地を示す光の玉でもある だがそれも夜の話 昼はひっそりとその存在を隠す まるで己はなきものであるかのように黙して語らぬ それでもその存在感はいつも僕の目の端に留まり 心…

さんどう

仲見世の参道は真っすぐに続く この道は人の目を楽しませ、お金を落としていく道でもあるけれど、 自身の心の整理をつけるための道でもあるはずだ 故に真っすぐであり 長く そして見通しがよいのだ 本殿が見えてくるにつれて 何を祈り、自身に誓うのかを考え…

白と黒

暗い道の向こうに白い壁に扉が見える。 それはさながら、今の自身の境遇を表しているようである。 明かりがまぶしく、直視するのもはばかれるようでありながら、目をそらすことが出来ない。 あぁ、この暗き道から飛び出て光の壁に羽虫のように真っすぐに向か…

作動音

ウオォォォン・・・ウオォォォン・・・ウオォォォン・・・ 其の機械は一定の間隔をあけて唸る。 低く、静かに、確実に、さながら人間の呼吸音のように。 SFに出てきそうな近未来的なフォルムからは想像できないような優しい音。 赤ん坊が母親の心音を聞いて落ち着くように、 僕も其の…

あやつり

人形劇が行われる。 コミカルな音楽に合わせて、人形がおどる。 おどる おどる おどる その場において、動くものはもはや人形しかいない。 それをただただ眺める人間。 微動だにしない人間。 どちらが本当の人形なのだ? 僕か?君か? 空恐ろしい気分になり…

きのした

男はひとりでぼんやりと物思いにふけっている。 がやがやとうるさいはずの公園がそこだけは何かが止まっているように感じる。 水の壁を隔てたかのように音が、感性が鈍くなるのを感じる。 日々の喧騒はこの場になく、どろんとした心地よさが場を支配する。 …