2017-11-05 ひとりきのこ 植物 緑 かれはぽつんと生えていた 周りに仲間もおらず、いても小さなものだけ 彼と同じ背丈のものはおらず 人間で例えるならば、ぼっちというやつであろう だがそんなことをものともせず彼は飄々と伸びていっている 彼は孤独なれど、一面の緑の中で唯一のきのこであり 彼の独自性を保っている そんな様を見て、僕は無性にこのきのこが尊く思えた
2017-11-05 かんらん 街 観覧車がキィキィと音を立てたような気がした 遠目から見ていると、少し一瞥しただけだと まるで動いていないかのように錯覚するそれは じぃっと眺めていると ゆっくりとではあるが確実に動いている その動きは、まるで僕の在り方を肯定してくれているかのようで なんとも嬉しい気持ちになる
2017-11-01 ものびる モノクロ ビルが聳え立っている その鋭角で真っすぐなさまは すぐに横道にそれがちな僕を糾弾するかのようであり 恐ろしくもありながらも目をそらすことができぬ 急な寒に見舞われた木々はすでに冬の装いとなっており 寒さは一層加速していく 冬はすぐそこまで来ているのだ
2017-10-31 あじさい 植物 緑 時季外れの紫陽花 ただひとつ、暗闇にぼんやりと佇んでいる 端々は枯れつつあり、寒さゆえにあと数日の命であろう それでも、今の時期に見れることはまるで奇跡のようであり 数週間前の暖かった気候を思い出し 今は過ぎてしまった夏を懐かしませるのだ
2017-10-29 てっこつ モノクロ 其の鉄の骨は僕を覆うかのようにぐぅんと伸びている さながら孫悟空を捕まえたお釈迦様の指のようである 上から下までよどみなく真っすぐと伸びている そのダイナミズムに圧倒されながらも 強烈なまでの規則性の美学に 僕はくらくらとめまいを覚える
2017-10-26 そなえる 植物 緑 名があるかどうかもわからない祠に これまたつつましやかに花が供えてある だが互いに出過ぎず、引っ込み過ぎずにいる様子は 熟年夫婦を思わせるようだ これでいいのだろう 片方が出過ぎないからこそ調和する いい塩梅 適当 よく使われる言葉なのだけれど、それがきっちりとあてはまるさまは そうそうないのだ
2017-10-25 ゆうぐれ 街 日は落ちて、世界を鮮やかに染めていく それは春や夏では見ることのできない強烈な色であり 寒さを我慢してでも見る価値のある宝石のようなものである 僕は爽やかだった夏が去るのを悲しく思いながらも どこか秋の訪れを好ましく思っているのである もちろんしばらくすれば、この肌寒さを疎ましく思うのであろうが