エヌ氏の遊園地

星新一大好きです|д゚)

ひとりきのこ

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かれはぽつんと生えていた

周りに仲間もおらず、いても小さなものだけ

彼と同じ背丈のものはおらず

人間で例えるならば、ぼっちというやつであろう

 

だがそんなことをものともせず彼は飄々と伸びていっている

彼は孤独なれど、一面の緑の中で唯一のきのこであり

彼の独自性を保っている

そんな様を見て、僕は無性にこのきのこが尊く思えた

 

かんらん

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観覧車がキィキィと音を立てたような気がした

遠目から見ていると、少し一瞥しただけだと

まるで動いていないかのように錯覚するそれは

 

 

じぃっと眺めていると

ゆっくりとではあるが確実に動いている

その動きは、まるで僕の在り方を肯定してくれているかのようで

なんとも嬉しい気持ちになる

ものびる

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ビルが聳え立っている

その鋭角で真っすぐなさまは

すぐに横道にそれがちな僕を糾弾するかのようであり

恐ろしくもありながらも目をそらすことができぬ

 

急な寒に見舞われた木々はすでに冬の装いとなっており

寒さは一層加速していく

冬はすぐそこまで来ているのだ

 

あじさい

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時季外れの紫陽花

ただひとつ、暗闇にぼんやりと佇んでいる

端々は枯れつつあり、寒さゆえにあと数日の命であろう

 

それでも、今の時期に見れることはまるで奇跡のようであり

数週間前の暖かった気候を思い出し

今は過ぎてしまった夏を懐かしませるのだ

てっこつ

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其の鉄の骨は僕を覆うかのようにぐぅんと伸びている

さながら孫悟空を捕まえたお釈迦様の指のようである

上から下までよどみなく真っすぐと伸びている

 

そのダイナミズムに圧倒されながらも

強烈なまでの規則性の美学に

僕はくらくらとめまいを覚える

そなえる

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名があるかどうかもわからない祠に

これまたつつましやかに花が供えてある

だが互いに出過ぎず、引っ込み過ぎずにいる様子は

熟年夫婦を思わせるようだ

 

これでいいのだろう

片方が出過ぎないからこそ調和する

いい塩梅

適当

よく使われる言葉なのだけれど、それがきっちりとあてはまるさまは

そうそうないのだ

ゆうぐれ

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日は落ちて、世界を鮮やかに染めていく

それは春や夏では見ることのできない強烈な色であり

寒さを我慢してでも見る価値のある宝石のようなものである

 

僕は爽やかだった夏が去るのを悲しく思いながらも

どこか秋の訪れを好ましく思っているのである

もちろんしばらくすれば、この肌寒さを疎ましく思うのであろうが